COLUMN
コラム施工図という名称は、設計図に比べると一般的な認知度は低いかもしれません。しかし施工図は施工者が実際に工事を施工するのに欠かすことができない重要な図面です。
施工図は生産設計とも呼ばれ、さまざまな作成図面で構成されます。
施工図について、作成目的や作成者、設計図との違いなどから説明し、その重要性について紹介します
施工図と設計図では、作成する目的が違います。目的が違いますので、図面に描出される情報も違ってきます。
施工図は、技術者や専門工事業者、職人などが知るべき現場施工に関わる情報が網羅されている図面です。
工事の主体となる請負会社は、この施工図をベースに工事の品質・工程・安全・原価・環境などの検討を行い各協力会社と共有します。
施工図は大きく、建築施工図と設備施工図に分かれます。
建築施工図は、コンクリート躯体の寸法や形状から仕上材や建具廻りまでの、詳細な情報を記載しています。設備施工図は、機械や電気などの設備について実際の規格寸法などの情報が記載された詳細図です。
この施工図と現場状況に違いがないか、無理な施工ではないかを協議することも、施工業者にとって重要な仕事になります。
設計図の作成は、設計者が発注者(施主・建主)の意向を聞くことから始まります。
その意向に基づき、設計者は建築物の大きさや間取り、敷地に対する位置、内装や外装の仕上げなど建築物のデザインの全容を描出するのです。
初期段階の基本設計で発注者の合意が得られたら、実施設計図に進みます。
実施設計図は、意匠図、構造図、設備図、電気図などで構成され、建築主事と呼ばれる確認検査機関の審査を受けるに足る内容でなければなりません。また関係する法規をクリアしている必要もあります。
発注者は、この実施設計図を基に予算を組み立て、各施工業者に見積依頼をして施工業者の選定に移行するのです。
施工図は、請負会社やその協力会社、又はそこから依頼された施工図作成会社が作成します。
これに対して設計図は、設計事務所や建築メーカーなどに所属する建築士が作成します。
それぞれ詳しく説明しましょう。
施工図は施工者サイドの業者が作成します。
ゼネコンや工務店、ハウスメーカーなど、建設事業を多く抱える会社では、自社で施工図を作成できる部署をもっていることが多いです。コミュニケーションが取りやすいため、スピーディーで納まりの良い施工図が完成しやすいというメリットがあります。
またこれらの会社の協力会社が依頼されて施工図を作成することもあります。
以上のようなケースとは別に、施工図専門会社が依頼を受けて作成することも多いです。専門会社はさまざま分野の施工図のエキスパートの集まりなので、ワンストップで品質の高い施工図を作成することができます。
施工図専門会社であっても机上だけの作業ではなく、実際に何度も現場に足を運び、実践的な施工図を作成することは言うまでもありません。
設計図は、設計事務所や建築メーカーなどに所属する、建築士が作成します。国家資格である建築士には1級、2級、木造の3種類あり、設計できる建物に違いがあります。
たまに見聞きする建築デザイナーや建築家という方も、ほとんどの場合、建築士の資格をもっています。
建築士法には、「設計とはその者の責任において設計図書を作成すること」とあります。
建築物は私たちの生命財産に直接関わるものですから、その基本となる設計にミスは許されません。一定の知識や技術、実務経験があると認定された方だけが、その責任を負うことができると定義されているのです。
建築士は、発注者の意向と予算を考慮しながら、「建築生産」の一環として設計図を描出します。
※建築生産|建築物の企画・計画・設計・施工、さらに維持管理から建物がその使命を終え解体されるまでをいう
施工図は、施工業者にとって最重要の図面です。施工業者は、施工図の躯体図(主要構造物)や仕上図(内外装)などに基づいて工事を施工するからです。
図面という2次元的なものを、3次元的な実際の形にするのが施工業者で、それに必要な情報をすべて盛り込んでいるのが施工図ということになります。
施工図があれば、施工業者は実際の施工前に建造物の細部まで検証することができます。
資材や道具、工法はこれまで自分たちが準備したり施工したりしてきたもので足りるのか、各部の接合部分の納まりは上手くいきそうか、そもそも工期内に完了できる施工内容なのかなどを協議することができます。
元請となる請負会社の技術者と各専門工事会社の担当者は、協力して施工図を検証・共有することが重要です。
施工業者が施工図を検証・共有していく過程では、施工上の重要ポイントや問題点が浮き彫りになっていくものです。
それに対して、事前に対処法を考えたり工程を見直したりすることができれば、実際の施工現場での手間取りを最小限に抑えることができます。
たとえばAの問題点に気づかずに、B、Cを施工してしまった場合、やり直し工事にかかる費用や期間を考えると、事前に対処しておくほうが格段にダメージは少なくて済むはずです。
ここまで施工図の重要性について紹介してきました。施工図は施工業者に渡される最終図面であり、最重要の図面です。
建築物の大小にかかわらず、工事には施工図が必要です。
あなたの立場が発注者や設計者、施工者のどのサイドであっても、施工図の存在と重要性を覚えておけば必ず役に立つことがあるでしょう。
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